KSCCが管理している
杉並区立向陽中学校万葉植物園
@ 開園と目的=昭和62年(1987)7月、
向陽中学校創立40周年記念事業として学校、家庭(PTA),
地域(KSCC)の協力のもとに開園。日本最古の歌集である万葉集に詠
まれた植物を集めたこの植物園が「自然に親しみ、古典に触れる、ゆとりと
潤いの一隅」となれば幸いです。(設立趣意書より)
A ねらい=当時学校教育は問題が多く
「学校.家庭.地域の連携」が強調されていました。
私は赴任した翌年向陽中の創立40周年記念事業をやらなければならない
立場にありました。私は校長としてどうせやるなら形式的な事業だけでなく、
継続的で目に見えて、生徒や、父母や地域の人達が向陽中に誇りを持てる
ような事業をしたいと考えました。そして浮かんだのがピッタリの場所に
恵まれた万葉植物園でした。費用や労力、特に将来にわたる管理のことを
考えて「向陽中学校、同校PTA,向陽スポ−ツ文化クラ
ブの三者による共同事業」として位置づけました。三者が日常的に連携
している象徴であり、学校が地域の文化センタ−であることを示す具体的な
姿をイメ−ジしました。然し、何事もそうですが取り分けて「作ることは
なんとかできるが維持することは難しい」のが万葉植物園です。
開園して17年経過した現在、これだけの姿が維持されているのは地域クラブ
である向陽スポ−ツ文化クラブがあったればこそと実感しています。
B 万葉植物と万葉の歌=万葉集全20巻、四千五百余首の
歌の約三分の一に当たる約千五百首の歌の中に約百六十余種の植物が詠み込まれ
ていると言われています。これが「万葉植物」と言われているもので、現在と
違う呼び方のものもありますが、当時は食用、衣料、薬用、染料、住居、工芸用、
観賞用等万葉人の生活と密着したものであり、万葉人が自然と共生していた
証でもありましょう。
そして万葉人は自らの心の動きを、これらの植物の姿にたとえる事で、
歌の表現を豊かにし、生き生きとさせました。「寄物陳思の歌=物に寄せて
思いを陳べる歌」です。 一首例を挙げましょう!「夏の野の繁みに咲ける
姫百合の 知ら得ぬ恋は苦しきものぞ」 (大伴坂上郎女 巻8−1500)
これは「夏の野の草の繁みに埋もれて咲いている姫百合のように、相手に知
られない恋は苦しいものであるよ」というもので、昔から女性に人気の高い
一首でした。現代はどうでしょうか。
ついでにここで詠われている頻度の多い植物を現代名で挙げて、歌数も
示してみましょう。ハギ=142首、コウゾ=138、ウメ=119,
ヒオウギ=79,マツ=77, モ(藻)=74,タチバナ=69,
イネ=57,アシ=49,スゲ=49,ヤマザクラ =46、ススキ=44、
ヤナギ=36,ヨクソミネバリ=33,ベニバナ=20(かたかごとよばれた
カタクリや、あきのかとよばれたマツタケ等は、1首づつです。
C 特色=万葉植物園と名乗る所は全国で約40余ありますが、
向陽中万葉植物園は、次の二点で自負しています。
◎、地域に開かれている。校庭の隅で、幅3メートル弱ながら
区の遊歩道に面して百メートル近い植物園はさながら、通行する 区民の方がたへの
展示台です。歌と植物名を書いたプレ−ト板も内外両方から見られるようにしてあります。
これは当時東の万葉学界を代表されていた国学院大学の桜井満博士をして「本邦初の開
かれた万葉植物園」だと言って頂き、地域の方からも「土地利用のアイデア賞もの」と
褒めて頂けました。このことは、次の新聞、テレビ、の報道、杉並区からの
「まちデザイン賞」「杉並百景」入選等の結果をうみました。
△ 朝日新聞S62.9.27朝刊都内版9段を割いた記事の大見出しは
「万葉の小径に歌人しのぶ」「杉並向陽中に植物園」「歌160首と草木が
ずらり---いにしえ思い散策楽しむ」「手製の歌プレ−ト立てる---地域の
人にも潤いの一隅-----道行く人に秋の花なびく」等の中見出し、小見出しです。
△S62-10-9,NHKTV「モ−ニングワイド」で向陽中万葉植物園から生中継(石沢典夫アナウンサ−)
この後、3.4.10.12チャンネルのTVや新聞雑誌多数が取り上げました。
△ 万葉講演会 昭和63年7月、国学院大学教授桜井 満博士をお招きして初めての
「万葉講演会」を催し、これを記念してKSCCの中に「万葉植物同好会」を設立し、
その看板を桜井先生に揮毫して頂いた。この会は、平成4年7月から定年退職した
高橋光安元校長を講師に、月例講座に発展し、現在も続いています。
世話人は岡京子氏で、KSCCのHPの「万葉の会」で内容を紹介しています。
△「杉並区第2回まちデザイン賞」入賞。「歌心を忘れてしまった、ゆとりのない私達 、
ふと振り返らせてくれる貴重な場所です」とは、推薦して下さったジャ−ナリストの
宗近照美さんのお言葉。(平成3年2月)
△ 杉並区制施行60周年記念「杉並百景」入選。〔平成5年1月1日)
この祝賀記念講演会を国学院大学教授 桜井 満博士を講師として実施。(5年2月23日)
△ 明日香村立聖徳中学校に姉妹園。平成13年に創立50周年を迎えた同校が
インタ−ネットで本校の万葉植物園を知り「万葉と深く関わりのある明日香にふさわしい」と
「万葉の小径」をつくられ、私も資料提供で少しだけお手伝いが出来ました。
明日香村「万葉の小径」記念碑の写真
◎ 集めてある植物の数が割と多い。全国に40余ほどある
万葉植物園の中でも植物数は多い方だと自負してきました。水生植物園と1年生
草本の栽培、更に、ツテを求めて、武蔵国分寺、市川市、静岡市の常葉学園大学の
万葉植物園とも有無相通じたり、コウヤボウキを求めて高野山まで出かけるような
笑い話まで、とにかく夢中で集めた結果でした。ホヨが一本発芽したとかマクワウリの
種やヒカゲノカズラが根付いた時など本当に天にも昇る気持ちです。
◎ おねがい 私も定年退職して13年目です。第一のお願いは、
向陽スポ−ツ文化クラブに入り、何年か私と一緒にこの万葉植物園の管理に当たり、
そのまま私の跡を継いで頂ける方を探しています。
必要な種を取り(鳥に食われず、落ちてしまう前に取る) 適期に蒔く。草を取り、
木の枝を払う。無くなってしまった植物を探し求めたり、予備の苗を増やしたり、
壊れたプレ−トを直し、読めなくなったプレ−トの字を書き直す。 と言った
仕事です。第二のお願いは今欲しい植物のタネ又は苗です。これはどこでも共通の
悩みでしょう。私はご生前の桜井満博士に「全国万葉植物園協会」設立をお願いし、
「やろう」と言われたところで博士の急逝にあいました。どなたかネットをたちあげて。
付記
もう一つ向陽中創立50周年記念に植えた「平和の使徒」と言われる「アンネのバラ」があります。
(このバラの真実ついては別項に私の研究があります。)
問い合わせ先:高橋 光安
アンネのバラ
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